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中国に七夕伝説の源流を尋ねる旅─シリーズ4─

2010年7月27〜7月31日

 「七夕伝説」 北京大学に登場!

私は「七夕伝説」「徐福伝説」「鳥居龍蔵」と言う3つのテーマで中国との文化交流に寄与したいと考えている。


2010年7月31日、北京大学構内を散策中に「七夕」の看板を見つけて、僅か4年前、即ち2006年に七夕伝説発祥の地を探し求めて陜西省・大茘県大壕営村を訪問した前後の状況から考えると正に奇跡のように思えた。
事実、中国へ出かけ友人、知人に七夕伝説について意識調査をしていた時、
私が所属する「天の川七夕星まつりの会」特製の名刺(左下図;かささぎ橋で織姫と彦星が出会うイラスト)を見せたところ、それは結婚斡旋所かと尋ねられたことがあった。 
詳細については下記URL参照願いたい。 

http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku1/tabi.htm
http://www.eonet.ne.jp/~kirakuna/travel-Edward/tanabata/tanabata.htm



そ れほど文化大革命後の中国、特に北京、上海では「七夕」は全く忘れ去られ、消し去られていたのです。そこから七夕伝説の発祥地を探し求め、七夕祭の復活を 願って、七夕まつりの源流を訪ねる旅が始まった。現在も中国が七夕伝説発祥の地であることを知らない人は中国、日本共に多い。
その概要は下記のURLを参照願いたい。

第1回、陜西省・大茘県大壕営村 (2006年7月30日〜8月3日 )
  http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku1/tabi.htm

第2回、老河口市・襄樊市作家協会 2007年8月17日〜21日 
  http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku2/tyugoku2.htm  

第3回、江蘇省・太倉市 (2009年5月6日)
  http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku3/tyugoku3.htm


第4回、湖北省・鄖(ウン)西県 (2010年7月28,29日)

  さて、今回の旅は2010年5月18日に上海で開催した「第1回七夕国際サミット準備会の為の打合せ会を経て、湖北省・鄖(ウン)西県から正式に招聘があ り、湖北省・鄖(ウン)西県で開催された「七夕伝説」セミナーに参加した。今回は調査訪問第4回、湖北省・鄖(ウン)西県 (2010年7月28,29 日)「第2回七夕国際サミット準備会」に当たる。
セミナーの状況; 
現在の日本ではどちらかと言えば「七夕伝説」は観光やビジネスとの結びつきが強いのに対して中国では学者を中心とした学問的研究が先行している。これは日中間でほぼ毎年開催している「徐福伝説」シンポジュームでも同様である。
湖 北省鄖西県より招聘された参加者は左表に記載されているように大半が大学教授の肩書きを持ち北京などの都会地及びそれぞれの学会で活躍されている。そのよ うな中で最初に私の氏名があるのは外国から出席した唯一の参加者と言うことで敬意を表してくれたものと思われるが恥ずかしい限りである。(※この日本文は 誤解され易いので中国語に訳すときには素直に‘光栄’であると訳して下さい) 


セ ミナーに先立って天河民族博物館で七夕文化芸術作品展を見学したが、これは天の川七夕星まつりの会が毎年七夕まつりと平行して開催している「技芸展」に相 当するもので、2006年に陜西省・大茘県大壕営村を訪問した時にも民家や学校で観られた七夕行事の由来ともなっている乞巧奠と深い関係がある。
天河民族博物館で七夕文化芸術作品展はこれまで見学したものよりも大規模で作品は恒久博物館に展示されていた。
「牛朗と織女」の図;中国では「牛朗と織女」は1男、1女の親となっている。
日本では子供の存在は見られない。



段教授記帳講演会場記念撮影旧暦七夕(8月16日)技芸展案内

さて、私がセミナーでスピーチした要点は;
1、徐福伝説と七夕伝説を比較して神話と伝説の違い及び研究方法の相違について
2.第1回七夕国際シンポジューム開催に至る経緯について
3、笹飾り文化の普及
4、第1回七夕国際シンポジューム開催は中国で
5、中国の七夕文化の特徴について
  ・長江沿岸に点在している
http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku1/tabi.htm
  ・農耕文化と深く繋がっている
  ・機織、農業耕作など労働文化とのかかわり
以下に上記の各テーマについて詳細を記す。

1、    徐福伝説と七夕伝説を比較して神話と伝説の違い及び研究方法の相違について
 私は現在中国との関係で「七夕伝説」と「徐福伝説」を研究している。
この2つの伝説を対比すると徐福伝説は間違いなく伝説であり、事実、証拠、史跡を研究し歴史へと結びつけることが重要である。小論『伝説から歴史へ』では実証の方法について具体的に書いた。
それに対して七夕伝説は神話であり実証は不可能で意味の無いことである。
むしろそれが発生した時代背景、環境及びそれがどのように(中国内、韓国、日本に)伝播したかその経緯を研究することに意味がある。
参考
神話(日本語;shinwa、英語:mythology)と伝説(日本語densetsu、英語;legend)
徐福伝説については日本・中国・韓国で毎年国際会議を開催している。今年の徐福国際会議は中国贛楡県で10月22〜24日に開催される。韓国では済州島で10月2,3日に開催される。

2.第1回七夕国際シンポジューム開催に至る経緯について
@日本国内では2007年7月7日に第10回七夕サミットを企画しました。
A日本国内の七夕サミットはその後も各地で継続して開催されています。
B7年以上前から中国で七夕伝説の源流を求めて調査旅行をしました。
C湯礼春先生のことは本で知りましたが第2回目の調査旅行(老河口)の時に初めて会うことが出来ました。
D中国でも次第に各地で七夕まつりが復活開催されるようになりました。
E第1回オリンピックが発祥地のギリシャで開催されたように、第1回七夕国際サミットは中国で開催されることが望ましいと考えています
F国際サミットを開催するためには全国を統一する組織(例えば、中国七夕会又は、国際サミット実行委員会)が必要だと考えます。類似の例としては 中国、日本、韓国に伝承されている徐福伝説の国際会議がほぼ毎年開催されていますが中国側の窓口は「中国徐福会」が担当しています。具体的な開催例は私の HP(http://www15.ocn.ne.jp/~nestplan/ )を参照ください。
G中国全土の七夕伝説伝承地の窓口が出来た時点で、日本各地で開催されている「七夕まつり」を見学することをお勧めします。
HGを組織することが困難であれば中国側の統一窓口の決定に当たって行政の長であり実行力の優れた葉県長のリーダーシップにしたい。
I参考資料;
A,  http://www.yuko.ne.jp/tanabata/ 
B.  http://www15.ocn.ne.jp/~nestplan/jyj/index.html 
C.  http://world.huanqiu.com/roll/2009-08/558488.html ←環球時報記事1
D.  http://world.huanqiu.com/roll/2009-08/558565.html ←環球時報記事2
E. 日本七夕活動見学予定
以上が私の考えている「七夕国際サミット」開催の為の手順です。開催までに更に2年以上の準備期間が必要。

第1回七夕国際会議準備会 2010/05/18 
湯 礼春先生から紹介があったということで湖北省鄖西県の鍾健華先生から天河(天の川)流域にある中国・湖北省鄖西県より七夕国際会議の正式招聘状を出したい というメールが入りました。現地は西安より更に2時間の遠い距離にあるので5月18日に予定している上海万博見学の機会に上海であれば会うことが出来ると 返事をしました。実は「七夕国際会議開催」は私の夢だったので実現出来るように短冊に書いて笹に飾りつけました。
その道程を要約すると以下のようなものです。

第1回七夕国際会議への道−中国に七夕伝説の源流を訪ねる旅―
@    2005年朝日新聞夕刊のコラム「窓」に七夕サミットの記事掲載(写真添付)
A    2006年 陜西省・大壕営村(西安市郊外)訪問 ※西安晩報に記事あり
     詳細;http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku1/tabi.htm
B    2007年7月7日 交野が原(現在の大阪府枚方市・交野市)で全国七夕サミット開催
C    2007年8月19日(新暦7月7日)漢水(天の川)沿いにある老河口市訪問、講演 
     詳細;http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku2/tyugoku2.htm 

D    2009年5 月6日 江蘇省・太倉市(上海市郊外)訪問、意見交換と史跡見学 
     詳細;http://www.yuko.ne.jp/tanabata/genryu/tyuugoku3/tyugoku3.htm
E    環球時報の取材を受ける。
     詳細;http://world.huanqiu.com/roll/2009-08/558565.html
F    2010年 天河(天の川)沿いにある湖北省・鄖西県の県長(書記長)と上海で会談
日本七夕の現状と歴史を説明葉書記長と発行図書交換ビデオ取材を受ける

3、    笹飾り文化の普及
日 本では笹飾り文化が普及している。これは5色の短冊に願い事を書いて笹に飾りつける。願い事は星に捧げることに意味がある。例えば、‘恋人が早く見つかり ますように’‘子供が生まれますように’‘試験に合格しますように’‘戦争が終わり、世界が平和になりますように’など個人的なものや公的なものまで多種 多様に書かれる。

日本・枚方の天の川の笹飾りこの中に葉県長の短冊も飾られています
日本でG8サミットが開催された時には参加した各国の首脳もこの文化に習って願い事を書いた。これは素直な気持ちで、本音で書くことに意味がある。笹飾り文化は世界に広める価値があるので共同で推進したい。
サミットで七夕祈願 2008.7.7

サミット会場で各国首脳らが書き込んだ短冊

サルコジ仏大統領「北海道洞爺湖サミットが環境保護、開発、経済成長、そして平和の保持といった世界的課題に対する対応方法を見いだすことに貢献することを願います。また、仏日関係150周年を迎える本年が、2国間における友好と交流へのきずなを促進する機会となることを願います」

メドベージェフ露大統領「織 り姫と彦星の間に天の川が流れていても、彼らはお互いを思う不屈の力によって宇宙の中でつながっています。これは地球の人々にとって示唆に富んでいます。 われわれも共通の故郷、平和、繁栄、そして母なる大地の未来に対する責任でつながっており、これらを守ることはわれわれの責務です。私は北海道洞爺湖サ ミットがこの高貴な目標達成に貢献すると確信しています」
/genryu
メルケル独首相「われわれの会議の上に良い星が輝きますように。すべての話し合いには親善の気持ちがありますように。われわれすべての心に責任感がありますように。そしてわれわれすべてが人々の希望を胸に受け止められますように」

私は「七夕伝説」「徐福伝説」「鳥居龍蔵」と言う3つのテーマで中国との文化交流に寄与したいと考えている。


ベルルスコーニ伊首相「世界中の子供たちにとって、希望、平静と豊かさのある未来となりますように」
ハーバー加首相「世界の自由、民主主義、人権、そして法の支配に基ずく世界を」
ベルスコーニ伊首相「世界中の子供たちにとって、希望、平静、豊かさのある未来となりますように」

4、第1回七夕国際シンポジューム開催は七夕伝説発祥地の中国で開催するのが妥当と考えます。
第 1回オリンピックは発祥地ギリシャで開催された。七夕国際シンポジュームも第1回は発祥地である中国で開催することを提案します。その為には陜西省・大壕 営村、老河口市、江蘇省・太倉市などの各市と協議して実行委員会を設置して協議することが望ましいと考えます。実行委員会設置について鄖西県がリーダー シップをとることを提案します。

5、中国の七夕文化の特徴について       
@長江流域に点在している
  基本的には陜西省・大壕営村、老河口市、江蘇省・太倉市などいずれも長江及びその支流の漢水、天河に点在している。各県、各市の上部の年号は私が訪問した
年を示している。

鄖西県;西安の南東方向約200q  
大茘県;西安の北西方向約110q  
老河口;鄖西県の南東方向160q  

中国の大河を概略すると全て西から東に流れている。七夕伝承地の位置を概略すると上記のようになる。
  A農耕文化と深く繋がっている
   中国の七夕伝説を概括すると川、瓜などの作物など農耕文化と深いかかわりがあることが分かる。
  B機織、農業耕作など労働文化とのかかわりがあることが分かる。即ち
   織姫は機織りが得意で雲絹を織っていた。
   一方、牽牛は農業に精を出す働き者でえあった。

6、湖北省鄖(ウン)西県(Yúnxī)について
鄖西県は上海から武漢を経由して西安へ行く交通路の要衝にあり、鄖西県城、上津城の二城の遺跡や
ウダツ(卯建・宇立)の上がる街並みが残っている。漢水(天の川)は武漢で長江に注ぎ、漢水の支流である天河(天の川)は鄖西県で合流している。漢水は交野が原の天の川の約100倍、1500kmの距離がある。
鄖(ウ ン)西県は交通の便を除けば葉県長のリーダーシップのもとに七夕国際サミットの開催に相応しい環境を建設中で博物館は既に出来ている。自然環境、歴史、史 跡なども揃い、現時点では他の3か所よりも相応しい環境にあると思う。交通の便については西安からだけでなく、襄樊市からも行くルートがあり、徐福国際会 議の例から見ても特に問題はないと考えられる。少なくとも第1回は都会地ではなく伝承地で開催する。
天声人語 
朝日新聞のコラムに「天声人語」と云うのがあるが、「七夕伝説」は中国風に云えば「神話故事」。従って、
ここで文字通り「天の声」を発したいと考える。
七 夕伝説の由来は「機織りが上手で働き者の織姫」と「働き者で牛を可愛がっていた牽牛」が恋に落ちて働らか無くなったので、天帝が天罰として天女である織姫 と牽牛の間に天の川を流して逢瀬を隔てたが、余りに可哀そうなので、7月7日と云う特定の日だけ「かささぎ」が橋渡しをして二人の逢瀬を助けたと云う故事 である。
即ち、働き者(労働)の大切さと人情の大切さを説いていると云うのが天の声である。
最近は、この天の声に関係なく人寄せパンダ的なお祭り気分だけが先行して「働くこと」と「人情の大切さ、有り難さ」を忘れてイベントを競っているのは如何なものか?
天罰(更なる不況)が来ないことを願っている。


余録

ラッキーとアンラッキー
今回の旅はラッキーとアンラッキーが混在したが不運を幸運に変えるそれは正に神話の世界でもあった。
@上海万博があったこと。上海万博のお蔭で湖北省鄖西県の県長以下主要メンバーと会うことが出来た。
A以前に老河口市で杜漢華先生に会っていたことで鐘建華氏と出会えたこと。
B上海経由が満席の為航空券が取れず、北京経由に変更されたことで北京大学を訪問する機会が出来たこと。
   
最近の日本の七夕事情
大阪市、京都市など都市部では現代風七夕まつりが益々盛んになり、大都市が競いはじめた。
@大阪市で、昨年、2009 年から中心部の大川を利用してEl電飾の球を5万個流してお祭りを始めた。
大阪天満宮とタイアップして中之島公園一帯を賑わい地区としている。
A京都市も、今年、2010年から「京の七夕」祭りを始めた。
和歌の名家として有名な冷泉家が平安時代から1200年も「乞巧奠」を陰暦7月7日に伝統を守り続けていることに敬意を表してか、笹飾りなどの伝統的七夕まつりは行われなかった。
桓武天皇はじめ、平安貴族と歌人は交野が原(現在の枚方市、交野市)を遊猟の地とし、記録では12回も行幸し多くの和歌を残している。
大阪市と京都市の場合は観光・ビジネス型のお祭りで伝統的な「七夕」とは関係ない科学の明かりを使って近代風に祭りを盛り上げている。
B一方東京ではビルの中で笹に短冊を飾る伝統的な七夕が守られている。
C枚方では病院に伝統的笹飾りをして、病気が早く治るように、手術が成功するように願いを書いている。
又、幼稚園、保育園などでも同じように子供の夢を短冊に託している。
D中国で七夕をバレンタインデーと結びつけたり、日本では冬の七夕が生まれたり、伝統的七夕まつりとは関係のない観光ビジネス化が進行している。
我々は伝統的な七夕まつりを守り続けたいと考えている。

関西医大付属枚方病院 こども館の笹飾り
‘病気が早く治りますように!’
こども病棟の七夕伝承地スケッチ
提供 岡修作先生 天の川七夕星まつりの会




天の川七夕星まつりの会代表 鳥居貞義記2010/08/06

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